Tatara

第3章
インストール

この章では、ダウンロードしたファイルから始めて、TATARAとTANRENがどのディレクトリからでも実行でき、インクルード・ファイルを見つけられる状態の MSXを用意します。ここで説明するインストールは、このマニュアルの以降の章が前提とするものです。これから先のセッションは、すべてこのディレクトリ構成で示します。

3.1 配布されるもの

Tataraは、1つのアーカイブ(archive)として配布されます。アーカイブとは、複数のファイルを1つにまとめたファイルです。名前はTATARxyz.LZHで、xyzはバージョンを表します。たとえば TATAR120.LZHはバージョン1.2.0です。https://tatara.tools/downloadからダウンロードできます。中には、表3.1の5つのファイルが入っています。

ファイル

内容

TATARA.COM

アセンブラー

TANREN.COM

リンカー

INCLUDES.LZH

インクルード・ファイルをまとめた、もう1つのアーカイブ(14章)

README.TXT

バージョンと、Webサイトのアドレス

LICENSE

Tataraの配布条件であるApache License 2.0

表 3.1: アーカイブの中のファイル

.LZHのアーカイブは、MSXではPMEXTを使って展開します。PMEXTはMSX-DOS2にもNextorにも付属しておらず、ほかではもう配布されていないため、https://tatara.tools/downloadにもコピーを置いてあります。

サンプル・プログラムは別にダウンロードします。ダウンロード先は https://tatara.tools/examplesです。サンプルはアーカイブではなく、サンプルごとに1つずつのディレクトリになっています。

このマニュアルでは、ファイルをPCやMacなどの別のコンピューターでダウンロードし、メモリ・カードなどを使ってMSXにコピーすることを前提にしています。

3.2 ファイルの置き場所

このマニュアルでは、ドライブA:に次のディレクトリがあるものとします。

A:\TATARA\ 
    BIN\         TATARA.とCOMTANREN.COM 
    INCLUDE\     インクルード・ファイル 
    EXAMPLES\    サンプル・プログラム(サンプルごとにつのディレクトリ)1
 

次の2つの条件を満たしていれば、ほかの場所にインストールしてもかまいません。2つのプログラムがあるディレクトリがPATHに含まれていること、そして環境変数TATARAがインクルード・ファイルのあるディレクトリを指していることです。どちらも3.4節で説明します。以降の章ではA:\TATARAで示しますので、別の場所にインストールした場合は、自分のディレクトリに読み替えてください。

注.  日本のMSXでは、バックスラッシュが円記号で表示されるため、上のディレクトリはA:¥TATARA¥INCLUDEのように見えます。これは同じ文字なので、このマニュアルのパスはそのまま使えます。

3.3 インストールの手順

始める前に、TATAR120.LZHとPMEXT.COMをドライブA:のルート・ディレクトリにコピーしておきます。

  1. ディレクトリを作ります。

    A:\>md a:\tatara 
    A:\>md a:\tatara\bin 
    A:\>md a:\tatara\include
     
    
  2. アーカイブをA:\TATARAに展開します。 PMEXTにはアーカイブのパスを指定できないので、まずアーカイブをこのディレクトリにコピーし、そこで展開します。最後のa:は、ドライブA:のカレント・ディレクトリにファイルを書き出すことを PMEXTに指示します。

    A:\>cd a:\tatara 
    A:\TATARA>copy a:\tatar120.lzh . 
    A:\TATARA>pmext tatar120.lzh a: 
     
    PMext Version 2.22 for 34K CP/M(Z80) 
    Copyright(C) 1990,1991 by Yoshihiko Mino. 
    Time stamp supported for MSX-DOS(2) 
     
    Archive file = TATAR120.LZH 
    Output device= A: 
     
    TATARA  .COM Extracting 00ED/00ED OK 
    TANREN  .COM Extracting 0066/0066 OK 
    INCLUDES.LZH Extracting 0185/0185 OK 
    README  .TXT Extracting 0002/0002 OK 
    LICENSE .    Extracting 005B/005B OK 
     
    End of archive.
     
    

    PMEXTは、ファイルを1つ展開するたびにその名前を表示します。Extractingのあとの数はファイルの大きさによって決まるので、Tataraのバージョンによって変わります。大事なのは、各行の最後の OKです。

  3. ファイルをそれぞれのディレクトリに移します。 2つのプログラムはBINに、インクルード・ファイルのアーカイブは INCLUDEに移します。

    A:\TATARA>move tatara.com bin 
    A:\TATARA>move tanren.com bin 
    A:\TATARA>move includes.lzh include
     
    

    README.TXTとLICENSEはA:\TATARAに残ります。

  4. インクルード・ファイルを展開します。

    A:\TATARA>cd include 
    A:\TATARA\INCLUDE>pmext includes.lzh a: 
     
    PMext Version 2.22 for 34K CP/M(Z80) 
    Copyright(C) 1990,1991 by Yoshihiko Mino. 
    Time stamp supported for MSX-DOS(2) 
     
    Archive file = INCLUDES.LZH 
    Output device= A: 
     
    WORKAREA.INC Extracting 00D5/00D5 OK 
    HOOKS   .INC Extracting 0045/0045 OK 
    BIOS    .INC Extracting 0098/0098 OK 
    ASCII   .INC Extracting 001C/001C OK 
    PORTS   .INC Extracting 007F/007F OK 
    SUBROM  .INC Extracting 003A/003A OK 
    EXTBIO  .INC Extracting 0091/0091 OK 
    ERRORS  .INC Extracting 006D/006D OK 
    MSXDOS  .INC Extracting 003A/003A OK 
    README  .TXT Extracting 0013/0013 OK 
     
    End of archive.
     
    

    2つのアーカイブはもう必要ありません。A:\TATARA\TATAR120.LZHと A:\TATARA\INCLUDE\INCLUDES.LZHは削除してかまいません。

  5. サンプルをコピーします。別のコンピューターで、ダウンロードしたサンプルのディレクトリを、MSXのディスクまたはメモリ・カードのA:\TATARA\EXAMPLESにコピーします。このとき、EXAMPLES\HELLO、EXAMPLES\TWOMODのように、サンプルごとに 1つのディレクトリのままにしておきます。MSXの外で行うのは、この手順だけです。
  6. 確認します。dir a:\tatara\binで TATARA.COMとTANREN.COMが、dir a:\tatara\includeで表3.2の 10個のファイルが表示されれば、正しく展開されています。

ファイル 内容
ASCII.INC 制御コード
BIOS.INC メインROMのエントリー・ポイント
ERRORS.INC MSX-DOSとMSX-DOS2のエラー・コード
EXTBIO.INC 拡張BIOSと、MSX-MUSICのFM BIOS
HOOKS.INC フック
MSXDOS.INC MSX-DOSのファンクション番号と、systemマクロ
PORTS.INC I/Oポート
SUBROM.INC サブROMのエントリー・ポイント
WORKAREA.INC システム・ワーク・エリア
README.TXT 各ファイルの簡単な説明
表 3.2: A:\TATARA\INCLUDEの中のファイル

3.4 PATHとTATARAの設定

環境変数(environment variable)とは、文字列を保持する名前で、MSX-DOS2がメモリに保存し、プログラムから読み出すことができます。このインストールでは、2つの環境変数を使います。

PATH

コマンドを入力すると、MSX-DOS2はその名前のプログラムを、まずカレント・ディレクトリで探し、次にPATHに書かれたすべてのディレクトリで探します。ここにA:\TATARA\BINを加えると、どのディレクトリからでも TATARAとTANRENを実行できるようになります。

TATARA

ソース・ファイルがほかのファイルを取り込むとき、TATARAはそのファイルを、まずソース・ファイルのあるディレクトリで、次にカレント・ディレクトリで、そしてTATARAに書かれたすべてのディレクトリで探します。これをA:\TATARA\INCLUDEに設定すると、どのプログラムでも、コピーを置かずに表3.2のファイルを取り込めるようになります。詳しい規則は13章で説明します。

いまのセッションで設定するには、次のように入力します。

A:\>set path=%path%;a:\tatara\bin 
A:\>set tatara="a:\tatara\include"
 

%path%はPATHの現在の値を表します。そのため、1行目は PATHを置き換えるのではなく、その最後に新しいディレクトリを加えます。setだけを入力すると、すべての環境変数とその値が表示されます。PATHには、新しく加えたディレクトリの前に、自分の環境のディレクトリが表示されるはずです。

注.  MSX-DOS2のプロンプトでは、上のようにTATARAの値を引用符で囲みます。囲まないと、MSX-DOS2は *** Invalid environment stringと表示し、環境変数を設定しません。後で説明するAUTOEXEC.BATでは、引用符は必要ありません。

この方法で設定した環境変数は、MSXをリセットするか電源を切るまで有効です。MSXを起動するたびに設定するには、次の2行をAUTOEXEC.BATに加えます。AUTOEXEC.BATは起動ドライブのルート・ディレクトリにあるバッチ・ファイルで、MSX-DOS2が起動するときに実行します。まだない場合は、テキスト・エディターで作ります。すでにほかのコマンドが書かれていてもかまいません。その最後に2行を加えます。

set path=%path%;a:\tatara\bin 
set tatara=a:\tatara\include
 

注.  TATARAには、PATHと同じように、セミコロンで区切って複数のディレクトリを書けます。プロジェクトが独自のインクルード・ファイルを持つときに便利です(13章)。

注.  TANRENにも、オブジェクト・ファイルを探すディレクトリを指定する TANRENという環境変数があります。このインストールでは必要ありません(23章)。

3.5 インストールの確認

どのディレクトリからでもかまいませんので、それぞれのプログラムを /Vオプションを付けて実行します。プログラムの名前とバージョンを表示するだけで、ほかには何もしません。

A:\>tatara /v 
Tatara MSX Macro-Assembler v1.2.0 
Copyright (C) 2026 Javier Lavandeira 
https://tatara.tools 
 
 
A:\>tanren /v 
Tatara MSX Linker v1.2.0 
Copyright (C) 2026 Javier Lavandeira 
https://tatara.tools
 

代わりに次のように表示された場合は、PATHに A:\TATARA\BINが含まれていません。setで確認し、3.4節のとおりに設定し直してください。

A:\>tatara /v 
*** Unrecognized command
 

環境変数TATARAは、4章で、最初のプログラムが MSXDOS.INCを取り込むときに確認します。

3.6 アップデート

新しいバージョンも同じ方法でインストールし、古いファイルを新しいファイルで置き換えます。それぞれのプログラムのバージョンは、/Vで確認できます。